☆☆ 五十肩の鍼灸治療 ☆☆


☆五十肩は早期治療が肝心

 加齢による退行性変化を基盤に過労、外傷、感冒や寒冷などを誘因にして、肩関節周囲組織の炎症に伴い、疼痛とともに次第に癒着や筋拘縮が起こり、肩関節の運動制限と疼痛が著明に現れます。50歳代に多発しますが、60歳代や40歳代にもみられます。 画像診断で腱板や関節包の状態を観察し、石灰沈着、腱板断裂など、明らかな病態診断をつけることができないものを五十肩と呼びます。


五十肩は通常、日常生活動作の繰り返しによるダメージ、加齢による新陳代謝の低下などで徐々に発生してくる病気です。「放っていればそのうち治る」は間違いです。治る時期を逸してしまうと治癒までに相当な時間がかかります。あるいは「痛くても動かさないと固くなってしまう」と自己判断で不適切な運動をすると更に悪化を招きかねません。早期に治療を開始し、的確な運動指導を受けることをおすすめします。


痛みと可動制限の症状のうち、痛みは三角筋から上腕・肘へ放散し、運動時だけでなく安静時、とくに夜間就寝時の痛みが特徴的です。最初の内は、痛みのため腕が挙がりません。この時期に、痛みを除くと速やかに治癒し、腕も挙がるようになります。しかし、この時期を逃してしまうと、肩関節の可動に、物理的な制限要因が発生します。その多くは、関節包の癒着です。関節包の癒着が生じると可動制限は顕著となり、凍結肩(フリーズショルダー)となります。こうなると治癒に少し時間がかかります。



☆肩関節とは四つの複合関節


肩関節というと、肩甲骨と上腕骨の関節(肩甲上腕関節)をイメージしますが、肩関節の健常な動きには、肩甲上腕関節はもちろんのこと、肩甲骨と鎖骨の関節(肩鎖関節)、胸骨と鎖骨の関節(胸鎖関節)、肩甲骨と胸郭の関節(肩甲胸郭関節)も参加しています。これら四つの関節のスムーズな連動上に、肩関節の動きは完成されます。中でも、肩甲骨の動きに関わる肩甲胸郭関節は重要です。肩甲骨の動きが悪くなると、肩関節(肩甲上腕関節)のみで腕を挙げようとするので、肩関節には、多大なストレスが生じます。


特に肩峰下の棘上筋腱の付着部が、肩関節の構造上、最大のストレス部位です。ここでの損傷と治癒の繰り返しにより、炎症が慢性化し、癒着が生じたものが五十肩と考えられます。機械的刺激による軟部組織の炎症性疾患であるので、画像診断では明確な器質的変性は観察されません。炎症だけならば、それが治まれば速やかに治癒しますが、炎症を起こした組織が癒着変性すると治癒するのに時間がかかります。また、肩関節の機能を代償する体幹など他の部位に障害が生じることもあります。


☆鍼灸治療と運動療法が効果的


他動的な可動域の測定で関節包・靱帯などの癒着や拘縮、筋性防御などの部位を診断します。次に、可動範囲内での内旋、外旋や外転運動に抵抗を加え問題のある筋を探索します。そうして柔軟性が低下し硬くなった筋、炎症や癒着が生じている部位に鍼灸治療をおこなうことで、鎮痛、消炎、代謝の向上をはかり、治癒を促進させます。さらに癒着している部分は、運動療法により、関節に動きをつけながら、できる限り穏やかに伸張させ、可動域の改善をはかっていきます。そうしながら機能的に低下している腱板と肩甲胸郭関節の機能を上げることで、肩関節は正常な動きを取り戻すことができるようになります。また肩以外の部位の機能的問題を解決することも、肩の治療に際しては重要です。