☆☆ 自律神経失調症の鍼灸治療 ☆☆


自律神経は自動制御装置


自律神経という言葉をずいぶん目に耳にするようになりました。自律神経とは一体どんなはたらきをしているのでしょうか?まず、自律神経というからには、自律しているわけです。では、何から自律しているのでしょうか?これは自分の意志です。自律神経は、自分の意志にかかわらずからだをコントロールしている自動制御装置です。だからまたの名を不随意神経ともいいます。


では、何を制御しているのでしょうか?これは、内臓や皮膚や腺です。では不随意神経があるなら随意神経もあるのでしょうか?あります。皆さんもよくご存じの運動神経とよばれる骨格筋を動かす神経です。おおざっぱに言うと、筋肉を動かす運動神経、内臓を動かす自律神経という構図です。わたしたちは、自分の意思で関節を動かし、移動したり行動したりしますが、もっと生命活動の基本となる、内臓の働き(消化吸収や呼吸など)、皮膚の働き(発汗による温度調整)、腺の働き(内分泌機構)などは自律神経が制御しています。


ストレスに弱くなった現代人


さて、外部からのストレスに対してからだの恒常性を保つのが自律神経の仕事です。ストレスには、物理的なストレスもあれば、精神的なストレスもあります。物理的ストレスとは、加重、加速、圧迫など運動で生じるストレスや、気温、湿度、気圧など気候で生じるストレス等があります。精神的ストレスとは、プレッシャーや人間関係、近親者との離別生きている以上いろいろありますね。


現代人は、便利で快適な生活を享受しています。これは物理的ストレスが、極端に軽減された生活形態といっていいでしょう。世の中が便利になると、人間関係は希薄になるものです。お隣から醤油を借りなくても、コンビニに行けばいいのです。便利になると、とりあえず何でもひとりでできてしまうという錯覚に陥ります。やがては、支えあいや寄り添いあう気持が欠如していき、社会性が希薄化していきます。でも、わたしたちは独りで生きていけないのは自明の理です。社会生活というものは人間関係のるつぼです。


自律神経失調症とは、ストレス過敏体質です


自律神経症状を訴えてくる患者さんの多くは、外部からのストレスに対して非常に敏感です。これはストレスを受けとめるための十分な柔軟性を欠いた状態で、例えるならピンと張りつめた弦のようです。あまりにもテンションの高い弦は、すぐに切れてしまいます。こうしたストレス体質には、性格や生い立ちが、大きく関与していることは疑う余地はありません。


こうした人は、人間関係での精神的ストレスにも過敏ですが、物理的な感覚にも過敏に反応します。例えば、あなたがお化け屋敷に入って、ガチガチに緊張しているところを想像してください。そんな時に不意に後ろからタッチされると、すごく過敏に反応しますよね。まあこれは、大げさかもしれませんが、ストレス体質の人の感覚は研ぎ澄まされ、絶えずこのような状態にあると考えていいのかもしれません。したがって、鍼刺激に対しても極度に抵抗性を示します。普通なら、穏やかに受ける程度の刺激に対しても、極度に緊張してしまいます。ですから、ストレス体質の人には、加減して少なめに鍼をするようにしています。



ストレスに打ち勝つ覚悟が必要



こうした患者さんは、鍼治療には向いていないといえばそれまでです。あるいは鍼治療でも、極度に刺激性を低くした、やさしい癒しの鍼治療もあります。この方式は、鍼で皮膚を刺激します。痛みの生じない閾値下刺激でおこなうので、気持のいい鍼治療です。もし、「痛くないですよ、やさしいし刺激ですよ、大丈夫ですよ。」というやさしい、癒しの鍼治療をお探しなら、どうぞそういうところに行ってください。              でも、あなたのからだは、ストレスに弱い、打たれ弱い状態なのです。そこを乗り越えていかなければ、回復は難しいことに気づいてほしいのです。                    あなたは自分の足で人生を歩いていかなければならないはずです。ときには、慰めや癒しも必要でしょうが、そのやり方では、おそらく根本的な解決法にはならないでしょう。ウイルスでも、ワクチンを注入して耐性をつけます。花粉症でも、花粉エキスを注射して耐性をつける減感作療法があります。ストレス体質もストレスにさらして耐性をつけ、そのとがって研ぎ澄まされた感覚を少し鈍くしてあげることが根本的治療につながるのではないでしょうか。


なぜなら、精神的高みを目指す時は、例えば滝に打たれたり、山を歩いたり、肉体を酷使して修行します。これは、物理的ストレスを介して、精神性を高めているのです。結局、物理的ストレスでも、精神的ストレスでも、生体に入力されてしまえば同じストレスです。つまり、痛い鍼を我慢して受けることは、精神面を強くする修行のような側面もあるのです。
自分の壁を乗り越えるには、覚悟が必要です。もちろん痛いという患者さんに鍼を打ちつづけるのにも覚悟がいるのです。治療者と患者の、二人の覚悟があってはじめて治療は成立します。しかし、自分のからだの状態を理解すれば、前向きに鍼を受けていただける人がほとんどです。あなたにあった治療を考えていきますから、ストレスに負けない自分づくりのお手伝いを私たちにさせてください。